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うつ
冒頭から暗い話で申し訳ありませんが、日本で一年に自殺する人の数は、三万人を超えています。この日本で、実に2時間に7人の人が生を断念しています。自殺の原因はいろいろあると思います。私の考えでは、生きたいと思っていてもあまりに生きにくい状況に追い込まれて、死を選ばざるを得ない心理状況になってしまうのだろうと思います。それは、感情の問題なので、人格とは全く関係の無いものです。私の気持ちとしては、それを回避するテクニックを持ち合わせていなかっただけなのだろうと思いたいです。
漢方では、五臓六腑の肝(かん)・心(しん)・腎(じん)に大きく関わります。肝は、もともとのびやかにあるはずのものですが、やりたくないことばかりさせられたりすることで、鬱積してしまいます。イライラして他人に当たることで解消するタイプの人が、多いようです。気分がすっきりせずモヤモヤします。保険範囲では加味逍遥散が良く使われますが、ベテランの専門家は抑肝散や香蘇散などを応用しているケースをよく見ます。
心に問題が出やすいのは、もともと繊細な神経の持ち主が、あの時こうすればよかった・こんどこう言われたらどうしようなどと神経を使いすぎて、精神疲労を起こしたときです。元気が出ずに気力が低下します。食欲が無くなり、泥のような便が一日に数回出ることもあります。眠りも浅く、とりとめの無い夢を多く見ます。第一選択は帰脾湯です。ものごとのとらえ方にゆがみがあるので、こころを開けるカウンセラーさんに相談するのが良いでしょう。
腎に問題が出るのは、急に驚くことに遭遇した場合にみられます。大切な家族が事故にあったりしたときに、ショック状態になる場合があります。また、がんの告知(あまり良い言葉ではありませんが)を受けたときなど、自宅にどのように帰ったのか分からないなどというケースもあります。人の話が頭に入らない、腰が抜けたように何もやる気が出ないなどもみられます。保険範囲ではお勧めできる処方を私は知りません。中国漢方では参馬補腎丸や至宝三鞭丸などがあります。
気持ちのエネルギーが下がっているような気がしたら、睡眠時間を増やしたり、気のおけない友人とお日様を背中に感じ温かい飲み物を飲みながらのんびりおしゃべりを楽しむのも良いでしょう。日帰り温泉でまったりするもの良いでしょう。笑える映画やマンガを一人楽しむのも有効だという説もあります。
自殺は残された人たちに大きな傷を残します。自殺以外の道を探して欲しいと思います。
キーワードは、温泉とおしゃべりです。
花粉症(アレルギー性鼻炎)
地球温暖化のせいか、気温が下がらず秋の花粉が終わらないうちに、春の花粉の気配を感じている人もいるようです。最近は、花粉症の予防のために、漢方薬を秋の終わりから飲まれる人が増えました。予防することで、症状を軽く感じる患者さんが増えているようです。
多くの人が2月の初めから、鼻水などの症状がだんだん強く現れますが、「冬の病気は夏治す」という言葉があるように、花粉症予防はもう既にスタートが切られています。今年の夏は酷暑のためにどうしてもクーラーに頼らざるを得ない状態でした。汗をかいて、体表の気が弛んでいる状態で冷たい風を受けると、冷えが体の中に侵入してしまいます。空調設備の整った環境に長くいると、外界の温度差に対して体温を調節する能力が低下して、クシャミや鼻水が出やすくなります。
過敏な状態で炎症が発生すると目の痒みや喉の痛みから頭痛・発熱のほか、ゼンソク・皮膚炎なども起こします。
体質改善にとって一番大切なことは、日本の伝統的な飲食を心がけることです。飲み物はあたたかいほうじ茶がお勧めです。食べ物は、分つき米を季節の葉モノのみそ汁や根菜類の煮ものでいただきましょう。山芋やもち米を少し多めに食べるのも良いでしょう。命を支えてくれる食べ物に感謝して、ゆっくり噛んで食べましょう。
運動するときはやや薄着にして、休むときは暖かくしてやわらぎましょう。
予防としては、体表を守る「気」を高めるために黄耆(おうぎ)を含んだ玉屏風散(ぎょくへいふうさん)が第一選択です。日本には衛益顆粒(えいえきかりゅう)という名前で輸入されています。免疫の異常を直接安定させると考えて良いでしょう。
何年も繰り返している場合は、漢方でいう「腎(じん)」まで影響が及んでいると考えます。免疫を安定させる力が弱まっていると考えて、参茸丸(さんじょうがん)が第一選択です。食べ物では、黒ゴマや黒豆のほか、煮干やかつお節・鶏の手羽先などでしっかりだしを取ったみそ汁やスープを飲みましょう。
もちろん、夜更かし朝寝坊は、健康にも地球にも良くありません。生活の中から化学物質過敏症の原因になるようなものを減らしてゆきましょう。
A市のNさんは、27歳の女性です。花粉症の他にアトピー性皮膚炎とゼンソクで悩んでいます。衛益顆粒を半年続けて、驚くほど安定しました。
キーワードは、体温調節能力の鍛錬です。
冷え症
ひとくちに冷え症といっても、ざまざまなタイプがあります。ここでは四つに分けて説明しましょう。
まず、手足の先が冷えるタイプです。お風呂に入っても寝る前に冷たくなってしまうので、夜は靴下をはかないと眠れないなど、困ってしまいます。これは、体の中心の暖かみを体のすみずみまで届ける力が弱いのです。日常生活の心がけは、お風呂に入るときにひなた水をかぶりお湯に入る。お風呂から出るときには、冷たい水をふくらはぎに左右5秒ずつかけてから出るのが良いといわれています。漢方薬では、気血を補う「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」や「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」を勧めます。
次に、体の表面がゾクゾク寒気を感じるタイプです。暖かい部屋から寒い外に出たときに、耐え難い寒さを感じるので、マスクをしたりマフラーを巻いたりします。これは、体表を守る衛気(えき)=バリアーが弱いのです。日常生活の心がけは、もち米やヤマイモを心がけて食べると良いでしょう。漢方薬では、衛気を養う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が勧められます。風邪をひきやすかったり花粉症がある人は、「衛益(えいえき)顆粒」が勧められます。
次に、下半身・特に腰が冷えるタイプです。下半身が浮腫んだり腰が痛くなる場合もあり、時には不妊症を伴う場合もあります。これは、漢方でいう腎(じん)の力が弱いのです。日常生活の心がけとしては、黒ゴマや安心して食べられる鶏モツを心がけて食べると良いでしょう。漢方薬では、「至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)」や「双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)」を勧めます。
最後に、おへその下が冷えるタイプです。体全体はなんとも無いのにさわると下腹だけ冷たいので、いつもカイロを貼らないではいられません。漢方では、血(けつ)の質が良くなくて、循環が良くない状態です。女性の場合、経血の中にかたまりがあったり、生理痛が激しいケースもあります。日常生活の心がけとしては、おへその上まで来る下着をしっかりと身に付けることです。漢方では、■帰調血飲(きゅうきちょうけついん)や「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」を勧めます。
キーワードはふくらはぎに冷水をかけることです。
■→草冠+弓
不妊
愛知県に吉村医院という産院があります。そこでは、出産をひかえた妊婦が、薪(まき)割りから、雑巾がけなど共同生活の場が展開されているそうです。最近の高級ホテル並みの豪華な病室で、家族と一緒にフランス料理に舌づつみを打つ出産とは、まったく違う光景が映し出されています。
妊娠も同じことで、すぐそこの八百屋に行くにも自家用車で行き、荷物を持って歩くことも無く、四つんばいになっての雑巾がけをしなくなってから、お腹の血の巡りが悪くなって、妊娠しにくいのだという説さえあります。
現代医学では、不妊の原因が女性にある場合、それに対して、外からホルモン剤などを使って操作して行くのが第一段階の治療で、最近は高度医療として人工授精や体外受精を選択してゆく話しも聞きます。
漢方では、腎精が足りない・気の流れが滞っている・血(けつ)が足りない、などといって、体質を整える薬を選んでいきます。不妊という現象を、人間が開発した技術で乗り越えてゆく道が現代医学なら、漢方では、患者さんが妊娠する準備が整っていない体質のゆがみをただしてゆく道だと思います。
基礎体温で、高温期にスッキリ体温が上昇せずに舌の引き締まり方が足りない場合には、腎陽が足りないとして「双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)」を高温期に服用することを勧めます。この薬は、体外受精などのときに、卵の数が足りないとかグレードが低い場合にも効果を発揮します。体外受精は、精神的にも肉体的にも経済的にも大きな負担のある治療法といわれています。なるべくチャレンジの回数を減らせるように、漢方の角度から準備を整えることは患者さんの負担を軽くする大切なステップとも言えるでしょう。
また、ストレスの解消もなかなか難しい社会になっています。収入のいい男性と結婚するために親の言うように育って、失敗を回避し、回りの都合に自分の意見を曲げてしまい、観念的に物事をとらえる女性が増えているように思います。そういう患者さんに限って、書店に並ぶ不妊の素人向けの本にある、漢方薬の紹介の記事にこだわって、「何年飲んでも効果が無い」と道をふさいでしまいます。近所の評判の良い漢方の専門家に相談することを勧めます。
キーワードは、雑巾がけです。
膝の痛み
梅雨に入って冷たい雨が多くなると膝の痛みに悩まされる人が多くなります。日本はアジアの東端にあって、緑が多くおいしいお米が採れますが、そのかわり、梅雨の時期は湿気で悩まされます。追い討ちをかけるように、クーラーの冷気で膝ばかりか肩や腰の痛みを感じる人も増えます。
中国漢方では痛みの質や痛む時期や冷えや熱など具体的な症状から原因をつきとめて、体質別の処方を提案します。
痛みの程度が強い場合、口唇や舌の色が黒ずんで舌の裏側の血管が太くなっていることがあります。動き始めが痛く少し動くと楽になります。朝起きたてはすぐに動けません。血の滞りが原因と考えられます。極度のこりや運動不足がその原因と考えられます。昔なら蛭(ひる)を患部に乗せて血を吸わせたこともあります。現在は瀉血(しゃけつ)といって皮膚を傷つけ吸引します。黒い血が抜けると楽になる場合がみられます。飲み薬では疎経活血湯(そけいかっけつとう)を勧めます。
力が抜けるような、痛いというより力が入らない感じの場合、耳鳴りや記憶力の減退もあります。「しょうがないやねぇ・・歳のせいだから」といわれるケースです。動き始めは楽ですが少し歩くと辛くなって、少し休めば楽に動けます。夕方悪いことが多いです。五臓六腑でいう肝や腎の衰えと考えられます。温水プールで歩いたりして優しく鍛える必要があります。杜仲の木の皮や黒ゴマで薬酒を作って飲むのも効果があります。独活寄生湯(どっかつきせいとう)がお勧めできます。日本には独歩丸(どっぽがん)として輸入されています。
重だるく、動かしにくく天気予報のように雨の前はよけい辛い場合、舌の引き締まり方が弱く歯の跡がついていたり、舌の上に白い苔が付いていたりします。体臭や口臭も気になります。お灸や電気温熱などで乾かしてあげると楽になります。水分のとりすぎに気を付けましょう。養生と思ってハトムギをご飯に一つまみ混ぜて炊いて食べるのも良いでしょう。麻杏■甘湯(まきょうよくかんとう)を勧めます。
「漢方薬だから・薬草からできているから・他の人が飲んだら効いたので、自分も長く飲めば効くはずだ」と思ってもあてはずれの薬を長く飲んでも効果は期待できません。痛みの状態や舌の色などきちんと相談をして専門の医師または薬剤師から薬はもらってほしいと思います。
■→草冠+意 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)
がんの漢方治療について
最近の研究の結果、がん細胞は毎日すくなくとも三千個できていて、それを本人の免疫の力でやっつけているから、がんが育たないことがわかってきました。さらに、ひとつのがん細胞が人体に影響をおよぼすようになるまでには、15年近くかかることもわかってきました。がんは生活習慣病のひとつだという説にもうなずけます。
がん予防にしてもがん治療にしても、一番大切なことは高価な健康食品を飲むことではありません。患者さん本人が、それまでの価値観・生き方全体をひっくりかえすようなこころのありようを変化させることがなにより大切だと思います。次に病気と闘う本人の体質の改善が重要です。
最近は、甘い飲み物を漫然と飲むケースが増えています。鉢植えの植物もそうですが、いつもいつも鉢の中の土が湿っていると根が腐ってしまいます。人間も胃袋にだらだらと水分を入れ続けると、「脾が湿によって健全な動きを失う」と中国医学では考えます。舌の上にヌルヌルした苔がつくのはその信号なので、擦り落としてもそのときに口臭が軽くなるだけなのでやめたほうがいいでしょう。
舌に白い苔がついて、食欲が落ちているときは「六君子湯」を、めまいがするときは「半夏白朮天麻湯」を、イライラして舌の先が紅いときは「半夏瀉心湯」を勧めます。苔の色が黄色くて、便秘しているときは「茵■蒿湯」を、尿量減少しているときは「茵■五苓散」をなどを勧めます。よほど喉が渇いたとき以外は、食事の一時間前に湯飲みに一杯の白湯か番茶を飲めば充分だと考えています。食べ物を吸収する力が自己治癒力を保持する基本ですから。
化学療法や放射線治療・外科手術によって治療することは、自分の領地に侵入した敵の軍隊にミサイルを撃ち込むようなものです。敵もやっつけますが自分の領民もたくさん傷付けることになります。自分の領民を守り、食糧を増産するような手助けはやはり漢方が良いと思います。補気薬・補腎薬の配合されている「参茸丸」が勧められます。
現在、もっとも注目されているのが、「霊芝胞子」です。がんが限りなく増殖する酵素の働きを抑える働きによって、理論上はがんの進行を止める働きが期待できます。
キーワードは、生き直しです。
■→草冠+陳
うつ傾向
日本人の7人に1人がうつ傾向という報告があります。確かに、ときには行き詰った気持ちになることは誰にでもあることですが、身体症状がなかなか取れない場合もうつ傾向であるといわれます。頭痛・首こり・肩こり・背中のこりに始まって、なかなか取れない疲れ、不安感・焦燥感・イライラや不眠(寝つきが悪い・眠りが浅い・途中で目が覚める・夢が多い)などに悩まされるケースもあります。
中国漢方は、症状をむりやり取るのではありません。原因となる体質のゆがみを治してその結果、自己治癒力が発揮されて症状を克服してゆくのです。
この時期の自然界は、生命力を体の内側に蔵する冬から、芽を出していく春に移り変わる時期です。静から動への大きな変化にさらされます。社会では、進級・新入学・就職と、人間関係の変化も大きい時期です。
五臓六腑でいうところの「肝」は気持ちをのびやかに調整する器官と考えています。周囲の大きな変化によって、その働きがダメージを受けます。気持ちが塞がったりイライラしたり体のあちこちが凝るのはそのせいです。「肝」のゆがみが「脾」に伝わると、食欲が無くなったり胃が痛くなったり下痢・便秘・腹張・腹鳴のほか、夢が多くなります。「心」に伝わると、不安感・眠りが浅い・動悸のほか、胸の痛みなども起きる事もあります。
まず、話をよく聞いてくれる専門医に受診するのがよいでしょう。食養生では、タマネギは身体を温める他、気持ちを楽にしてくれます。セロリは熱感を取り除いてくれるので、のぼせ・イライラ・頭痛・めまいに良いとされています。眠って気持ちの疲れを癒しましょう。
中国漢方では、邪魔をするものがあるとき「実」といいます。肝の気の流れが邪魔されているときには、加味逍遥散(かみしょうようさん)や抑肝散(よくかんさん)や釣藤散(ちょうとうさん)などを勧めます。脾に伝わり水のよどみが気の流れを邪魔して喉に違和感があるときは、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などを勧めます。不眠の場合は、温胆湯(うんたんとう)を勧めます。
一方、不足するときには「虚」といいます。肝の陰(安定成分)が不足してのぼせるときは、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)を勧めます。肝の血(滋養成分)が不足してイライラして眠れないときは、酸棗仁湯(さんそうにんとう)を勧めます。心の血と脾の気(活動成分)が不足してクヨクヨして眠れないときは、帰脾湯(きひとう)を勧めます。心と腎の陰が不足してあせって眠れないときは、補心丹(ほしんたん)を勧めます。
いずれにしても、「いま・ここ」を喜び感謝できるように、毎日の生活を工夫したいものです。
<花粉症根治は、「衛気」を高めて>
花粉症の季節になりました。実は花粉が原因というよりは、車の排気ガスなどに含まれる微粒子が過敏性を高めていると言われています。さらに気密性の高まった住居でのカビやダニ、エアコンのフィルターのほこりも原因していることもわかってきました。
中国では、「タマゴは温めるとヒナになるが、タマゴに似た石はいくら温めてもヒナにならない」という言葉があります。外側の原因は条件であって、結果を決定するのは内側の原因だという意味です。具体的には、同じ空気を吸っても、過敏な体質を持っている人はくしゃみをするけれども、過敏な体質をコントロールできている人はくしゃみが少ないということになります。
現代人の防衛能力を低下させた原因のひとつとして、食べ過ぎ・運動不足・夜更かし・ストレスが上げられます。低カロリー・低脂肪の昔から日本で食べてきたご飯を食べましょう。夜は遅くも11時には寝るようにしましょう。
さて、花粉の量が少ないといわれている今季ですが、シーズンの2週間前から免疫を安定させておくと症状のピークを低く抑えられることがわかってきました。そこで、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)をしっかり服用してガードを固めましょう。日本には衛益顆粒という名前で輸入されています。
いざ、くしゃみ・透明な鼻水が出たら「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」で身体を温めて症状の緩和に勉めます。目の痒み・のどの痛み・身体のだるさを伴う鼻づまりには、「鼻淵丸(びえんがん)」が自費ですがお勧めできます。保険範囲では「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」がお勧めできます。漢方に詳しい医師または薬剤師に相談して服用してください。
風邪を引きやすく困っています。
Q:うちの家族は風邪を引きやすく、困っています。主人は急にのどが痛くなり熱が出て会社を休むことが一冬に2回くらいあります。高二の娘も全く同じ風邪をひいて学校を休みます。私は熱は出ないのですが身体がゾクゾクして鼻水が止まらなくて食欲が落ちます。風邪の予防と治療に効果のある漢方薬はありますか?あと、主人の会社は中国や東南アジアに従業員がよく行き来します。鳥インフルエンザがとても心配です。漢方で防げますか?(榛名町 Y子)
A:風邪を引くとお仕事や学校など、日常生活が乱されてしまいます。また、本人も発熱や喉痛・倦怠感・咳・頭痛など苦しい症状で困ります。引かないですめば引きたくないものですね。
現代医学では、熱を抑えたり痛みをとる鎮痛解熱剤と抗生剤と胃腸薬が合わせて処方されることが多いです。
もともとの漢方では、逆に生姜や葱の白い部分や葛の粉を熱くして服用して体温を上げて、むしろ身体がウイルスに対して発熱して闘うのを助けるような薬が使われてきました。伝統的な葛根湯や桂枝湯がそうです。最近では、「銀翹解毒丸(ぎんぎょうげどくがん)」という処方は、薬草で鎮痛解熱作用や抗生剤的な作用が期待されてよく使われています。
風邪を引くのは、今の生活がゆがんでいるという体からの信号ですから、生活や身体を見直すチャンスだと思います。抗生剤まみれの農作物や家畜のようにならないように、食事の内容・食べ方から、運動不足でないか、呼吸が浅くないかなど反省するきっかけにしたいものです。漢方では、熱の出る風邪は動物の脂(乳製品も含めて)の摂り過ぎが原因のことが多いと考えます。身体の中によどむエネルギーを発散しようとして風邪をひくといえます。予防としては節食します。身体が冷える風邪は、鍛錬の不足が原因している場合が多いです。予防としては昼前に30分芝生の上を歩き、風呂上りには膝下に冷水を掛けます。食事は一口50回噛みます。
鳥インフルエンザは、数年前のサーズとともに世界的に恐れられています。日本でも中国でも、現代医学の専門家に負けないほど、漢方の専門家も必死に研究・討論を重ねています。今の時点で言える事は、@人間は地球の生き物の一部だから、他の生き物をすべてコントロールすることは不可能と腹をくくる。A予防としては風邪と同じですが、中国の「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」が効果的と思われます。日本には「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」として輸入されています。B治療としては、サーズで注目された「銀翹解毒丸」や「板藍根」が期待できると思われます。
冷え性でとてもつらいです。
Q:これからの季節、足先や足首・手先が冷えてとても辛いです。ビタミンEも飲みましたし、漢方の当帰芍薬散も飲みましたが満足いく効果が感じられません。風邪を引きやすく治りにくいのでいつも体調がすぐれません。暖房の部屋に行くと顔がのぼせて赤くなるのも気になります。漢方で違う方法はありますか?(黒保根 K子)
A:確かに、当帰芍薬散には冷え症という効能はあるとされています。しかし、漢方では病名だけでなく、「証(しょう)」といって漢方独自の体質の見方があります。その体質の見極めがうまく出来て薬を的確に選べると、症状のかなりな改善を得られると思います。
この方の場合、風邪を引きやすいので「気虚(ききょ)」といって外界の気温の変動に対して抵抗する力が足りないことも原因のようです。食欲が普通にあれば、「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」を勧めます。食欲が足りないようであれば「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」を勧めます。
漢方で簡便な体質の見分け方として、冷える場所によって「証」を読み取る方法があります。
からだの表面が冷える場合、風邪も引きやすく治りにくい、お風呂から出てもすぐに冷えてしまいます。すぐ疲れやすい「気」の力が足りないタイプです。一週間に一回は山芋を食べると気の力が付いて来ます。舌の引き締まり方が足りなくて、舌の縁に歯型が付いている場合もあります。「玉屏風散」が「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」という名前で輸入されています。
身体の末端が冷える場合、便秘や生理痛・生理不順で悩んだり肌や髪の毛が乾きやすくめまいがする場合もあります。漢方でいう「血(けつ)」の質が悪く冷えによって循環が悪くなった状態で「寒凝(かんぎょう)」のタイプです。毎朝、煮干しや鰹節でだしを取った味噌汁を飲みましょう。舌の色が淡い場合が多いです。保険適応だと「四物湯(しもつとう)」が日本では勧められますが、中国では「■帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」も使われています。自費で「婦宝当帰膏(ふほうとうきこう)」という処方は、身体になじむ甘さの飲みやすいシロップで、お湯で割って続けやすく驚くほどしっかりした効果があり、このタイプの冷えで悩んでいる患者さんに喜ばれています。
最後に、身体の芯・腰・下腹・頭の冷えのタイプの場合、月経困難症や不妊症、身体や脳の老化に困っている場合があります。特に夜に何度もトイレに起きてそのたびに身体が冷えるので眠れません。物忘れがはげしくて意欲も湧いて来ません。今、流行のジンギスカンやエビチリなどもお勧めです。保険適応だと「真武湯(しんぶとう)」や「八味地黄丸(はちみじおうがん)」になります。自費で「双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)」という薬が勧められます。
不妊症で悩んでいます。
Q:38歳の主婦です。結婚して12年になります。不妊症で悩んでいます。主人の精子の数や運動率などもぎりぎり正常値です。私のほうはあまり妊娠には問題の無いところに子宮筋腫があります。体温表は排卵の後の体温の上昇が遅いように思います。人工授精を7回、体外受精を3回やりましたがうまくいきません。漢方でよい方法はありますか?(玉村 U子)
A:現在、夫婦十組に一組は不妊症で悩んでいると言われます。男子の精子数は二十年前の3分の2と言われ運動率の低下も著しいとの報告もあります。女性の子宮内膜症・子宮筋腫・無排卵月経なども急激に増えています。
一方で特に現代医学の最前線の体外受精は、科学的に女性のホルモンバランスをコントロールして、採卵・移植といった高度な技術を使います。ところが、うまくいかなかったときの精神的ダメージは、男性には計り知れないものがあるだろうと思います。そればかりか、高額な費用がかかり、女性の体に負担をかけることが多く、多種のホルモン剤による複合した副作用の心配もあります。
中国漢方では、力ずくで排卵させるなどという方法ではなく、体のゆがみを治すことによって体質改善をはかって、自分の力で自然に妊娠しやすいように整えていくことが大切と考えています。自然のホルモンバランスに寄り添うように、卵胞期には「養血(ようけつ)」といって当帰や地黄を含む処方を服用し、黄体期には「補腎陽(ほじんよう)」といって鹿茸や人参を含む処方を服用する「周期療法」というやり方が注目されています。特に体温上昇が遅いケースの場合、この「補腎陽」が欠かせません。
高齢出産といわれても、漢方によるからだの若返りケアを行えば良いのです。基礎体力を高め、卵巣の力がつき、ホルモンバランスが整い、子宮内膜の状態を若返らせれば、若い人と変わりなく妊娠・出産・育児が可能と考えています。「補腎陽」の処方を多く使います。黒ゴマやくるみ、鶏のもつ煮・手羽先のスープなどを積極的に摂りましょう。
また、最近はおへそや腰が出てしまうようなファッションが流行っていますが、骨盤におさまっている妊娠に関係のある大切な器官を冷やすもとだと考えられます。骨盤内の血行を良くして機能を高める様なヨガや気功のような運動を心がけて、冷たいものの飲食を控えます。
血液をサラサラにしておくのも、妊娠しやすいからだ作りの基本です。もともと生理痛がある、経血に塊りがまざる、経血の色が黒っぽく粘りがある、生理中に頭痛や肩こりなどがある場合は、血の流れがドロドロしていて妊娠の邪魔をしていると考えます。「活血」という方法で血液をサラサラにします。日本では「桂枝茯苓丸」が有名ですが、より効果が期待できる「■帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」などがお勧めできます。もちろん、背中の青い魚や臭いの強い野菜を摂るのも忘れてはいけません。
さらに、習慣性流産の患者さんの場合、舌の引き締まり方が足りない場合が見られます。「気虚」といって受精卵や胎児を子宮の中に保つちからが足りない体質と考えられます。衛益顆粒(えいえきかりゅう)がお勧めです。
しかし、なんといっても、一番大事なのが、ストレスから身を守ることです。毎日のように婦人科で検査を繰り返して気持ちが疲れたり、今度こそと期待をかけていたのにうまくいかないとがっかりします。自分の人生の一部なのに全部のように錯覚してしまいがちです。自然の緑の中でゆったりと散歩したり、温泉につかったり。穏やかな音楽や美術を楽しんだり、ちょっとしたパートナーとのやさしい会話を楽しむ余裕が欲しいものです。
いずれにしましても、漢方薬は妊娠前・中・後と、女性のからだとこころを応援する強い味方です。おおいに利用してください。
■→草冠に弓(一般的な日本語パッチに対応していないため作字しました。)
夏に弱くて困っています。
Q:毎年、夏に弱くて困っています。やっと夏が越せたかと思うと、こんどは夏の疲れが出て、だるくて・朝が起きられなくて・食欲が無くて・眠りが浅くて・便が軟らかかったり硬かったり毎日は出なくなります。下半身はむくんでいるのに、目の下にクマができます。なにか良い漢方はありますか?(大胡町 Y江)
A:地球規模で温暖化が叫ばれています。都会では、一晩中クーラーをつけなければ寝られない状態が続いています。つい冷たい飲み物に手が出ます。夏ばてのひどい場合は立ちくらみまでする人もいます。
夏ばての原因は暑さですが、日本の場合、特に湿度の高いことが特徴です。私は中国の西安で漢方の勉強をさせてもらいましたが、40度になっても日陰に入ると湿度が低いために爽やかで、夏のエネルギーが体に入ってくる感じがしました。日本ではじっとりと汗が体にまとわりついて、重だるい感じです。可能であれば、林の木陰で休むのが一番です。
二番目に問題なのは、クーラーによる冷やしすぎです。省エネという意味では28度と言われています。ところが、自律神経の安定から考えれば外気温と5度以上の差があり、繰り返し出入りがあるとその自律神経の混乱が生じるといわれています。外気温より2度程度低くして、扇風機で風を回してあげるのが、健康にも省エネにもつながると思います。夏は暑いものです。汗をかくのが自然なのです。
三番目に問題なのが、冷たい飲み物のとり過ぎです。ヒトは46万年前に火を使うようになって、食べ物に火を通して食べ、お湯を飲む習慣が出来ました。40年前に冷蔵庫やクーラーが普及して、冷たいものを口にするようになりました。しかし、人間のからだはそう簡単に冷たいものを受け入れられません。当然、消化吸収が低下して、口から入る糖分などは栄養過多でも体内に吸収できずに栄養不足になってしまいます。氷の浮いているような飲み物は、いくら飲んでも口の渇きが取れません。暖かい飲み物をお勧めします。
四番目に問題なのが、不規則な生活です。食事の時間はなるべく一定にしましょう。胃腸が安定して働いてくれるためには、決まった時間に食べ物をとる必要があります。食欲があまり無くても少量をとるほうが回復しやすいようです。睡眠については、夏ばて解消の切り札ともいえるくらい大事です。とにかく早く寝るようにしましょう。12時過ぎに寝るなどというのはもってのほかです。10時を過ぎたら寝る準備で、10時半には眠りにつけるようにしましょう。
五番目に問題なのが、汗をかかない生活です。住んでいる場所が夏の「気」に包まれているのに、クーラーで人工的な涼しい空間を作っても、からだの中の時計は夏です。その大きなギャップと、人間だって動物なのに少しの時間も歩かない運動不足で、体全体の循環から代謝まで、おどろくほど低下しています。早寝をした分、涼しい朝に散歩をして汗をかくように心がけましょう。
漢方で、第一選択は「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」ですが、せんじ薬しか保険適応にはなりません。保険適応のエキス剤だと「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」に「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」を半量加える方法があります。
いずれにしましても、薬さえ飲めば治るという考えはやめましょう。生活を変えなければ薬も本当の効果を発揮できません。そういう意味では、夏ばては生活習慣病といって良いでしょう。
漢方で熱中症予防の方法は?
Q:うちの高校生の息子は、部活でバトミントンをしています。一日に3枚も4枚もシャツからパンツまでびっしょりになります。私は、病院の調理室で働いていますが、湿気がひどく息苦しくなることもあります。去年、家で留守番をしていた高齢者が熱中症で亡くなったニュースを見ました。うちにも年寄りがいるので心配です。漢方で熱中症予防の方法はありますか?(宮城 T子)
A:バトミントンは、瞬発力を要求されるスポーツです。風は公平さを失うことからカーテンをした体育館で練習を行います。卓球なども同じで、そうそう冷房の効いているところはありませんから、蒸し風呂のようでしょう。炎天下で行われるラグビーや野球の方がかえって熱中症に注意が向きます。ご本人も湿度の多い温度の高いところでの作業ですから、同じく炎天下での造園などの作業にはない注意が必要です。高齢者の場合特に気を付けたいのが、夏以外でも急激に暑くなったときです。加齢により外気温の急激な温度変化に対して、皮膚の温度センサーの感度が鈍くなっています。皮膚血流量を上昇させ発汗をうながし体温を下げる力が低下しているのです。
基本的な注意としては、スポーツをする場合、30分に1回程度の休憩と0.2%程度のミネラル成分を含む飲料で水分補給です。朝の味噌汁をおかわりするのもいいことです。煮出した熱い麦茶をすすりながら梅干を食べるのも日本的な解暑法です。作業現場では重なる疲労や睡眠不足によって、大きな事故に結びつく場合もあります。無理をせず休憩時間を確保して体温の上昇を防ぎましょう。特に高齢者の場合は、口渇感を感じにくくなっていますから、口渇を感じなくても定期的な水分補給を心がけましょう。特に糖尿病の方や利尿剤系の降圧剤などを服用している場合には、スポーツ飲料は倍以上に水で薄めて飲みたいものです。
漢方の立場から熱中症をみると、単に水分不足という考え方にとどまらずに、血行不良という可能性まで考えられます。漢方では汗をかきすぎると血がネバネバになると考えています。実際、現代医学でも、エンドセリンという物質が血液中に増えて血管や気管を収縮させるので無酸素運動状態を増やします。更には、赤血球の膜が硬くなり、それより細い毛細血管を通れなくなってしまい、末梢での血行不良が深刻なダメージを与えるという説が唱えられているのです。
「生脉散(しょうみゃくさん)」は、薬用人参と麦門冬と五味子という3種類の薬草で成り立つ処方です。体内の潤いを保ち、血行を改善する第一選択の処方です。薬用人参はご存知の朝鮮人参です。「気」を補って新陳代謝を助け活力を高めます。麦門冬はユリ科の植物の塊根です。余分な熱を冷まし体内の潤いを補い口の渇きや過剰な食欲を抑えてくれます。五味子は植物の果実です。五つの味がするのですが、一番ハッキリしているのが酸味です。梅干しを思い出しただけで唾液が出るようにのどの渇きを潤します。さらに、収斂作用がありますから、過剰な発汗を抑制して汗ばかりでなく汗と一緒に「気」が漏れ出てしまいバテるのを防いでくれます。
「生脉散」は「麦味散」という名前で輸入されています。スポーツ飲料に混ぜて水で倍に薄めて飲むのをお勧めします。夏の養生が冬の健康につながっていきます。
足に水虫ができて困っています。
Q:二十年前から、足に水虫ができて困っています。はじめは足の指の股でしたが、かかとがガサガサして、爪も白く厚くなってしまいました。夏になると手のひらの皮もむけて人に見せられません。何か所かの皮膚科でいろいろつけ薬を試しましたがうまくいきません。飲み薬を勧められて飲みましたが肝臓の数値が悪化したのでやめました。漢方でよい薬はありますか?(前橋 M雄)
A:水虫は、現代医学では、白癬菌が皮膚の角質層に寄生してなる病気です。温度と湿度が上がってくると、痒みや痛みを感じるようになって、夏を感じる人が多いと聞きます。あるデーターでは、サラリーマンの4人に一人は水虫であるとされていますし、女性にも増えているとされています。症状は主に足の指の間やかかとに出来ますが、股間部や爪にも発生し、基本的には体中どこにでもできる(陰のう部はなりにくい)治りにくい皮膚病です。
中国漢方では「香港脚」などと言い、身体に「水のよどみ」ができやすく抵抗力の弱い人がかかる病気としています。同じように菌の付いている足拭きを使ってもうつる人とうつらないひとがいるから、外の条件より個人の体質を重視します。日本は温帯モンスーンで湿度が高いのに、最近は動物の脂をたくさん摂取するようになりました。揚げ物や乳製品です。胃腸の働きが冷たい飲食で弱まると、揚げ物や乳製品の消化吸収が充分でなくなり、身体に水がよどむのが主な原因と考えています。
治療の前に、まず皮膚科で皮膚の切片を染色して確定診断を受けましょう。似たような皮膚病には「接触性皮膚炎」「貨幣状皮膚炎」「カンジダ症」「掌跡膿胞症」「アトピー性皮膚炎」「脂漏性湿疹」などがありますが、専門家によるしっかりした鑑別が必要です。
治療としては、現代医学の方法で内服薬が勧められる場合がありますが、定期的な肝臓の検査をして副作用が出たら中止しなければなりません。
漢方では、まず、白癬菌が寄生しにくい皮膚にする必要があると考えます。日本の伝統食を時間をかけてよくかんで食べ、水のよどまない体質に切り替えます。高脂血症や糖尿病などの疾患は治療します。外出から戻ったら手を洗うように足も洗いましょう。患部をいつも清潔に乾燥させるように心がけます。
次に、土槿皮酊(どきんぴちんき)を、皮膚につけます。数日つけると痛くなりますから、落ち着くまで休んで、また繰り返しつけます。特に風呂上りが効果的です。指の股などの皮膚の薄いところは華陀膏(かだこう)を勧めます。爪には爪の生え際に根気良くつけます。さらに、棒灸(中国温灸)で、一回10分程度温めます。乾かすことと熱することで、白癬菌が寄生しにくい皮膚にします。爪の場合も爪の生え際を温めます。
水虫が治る薬ができたらノーベル賞などといいます。私も爪の水虫は内服以外治らないと思っていましたが、富士見村の患者さんが上記の方法で治ったので、他の患者さんに勧めて喜ばれています。とにかく、根気です。聞くところによると、抵抗力の低下した高齢者が集団生活をする場面では、感染が広がりやすく、介護を受け持つ若い人たちにも感染がおきているということです。一度かかると、家族にもうつる可能性が高まります。「お父さんの洗濯物と一緒に洗わないでっ!」と言われないように、早く卒業したい病気ですね。
中学2年の息子がひきこもりに・・・
Q:中学2年の息子について相談します。昨年の5月から学校へ行かなくなり、部屋にこもるようになりました。初めは、家族とも話していましたが、最近は機嫌のいいときでないと出てきて話をすることもなくなりました。本人はオドオドしたりイライラしたりしています。お医者さんにも行かないので、困っています。なにか効果のありそうな漢方薬はありますか?(鬼石 M江)
A:いわゆる「ひきこもり」という状態で、たぶん「昼夜逆転」といって家族が寝静まるのを待って(家族と顔を合わせて話をするのを避けて)台所で食べ物を探して、家族が起きる頃に、寝るのでしょう。
まず、息子さんがこれまでかかってきた小児科のお医者さんに、お母さんだけが行って状況を話して対応を考えてもらってください。その先生が受けてくれるかしかるべき先生を紹介してくれます。もしうまくつながらなければ、「県・こころの健康センター」に問い合わせても良いかと思われます。
さて、漢方の方ではこれまでの経験から、効果がみられたケースが数多くありますので、ひとつの選択肢として考えられるのは充分に意味のあることだと思います。
中国漢方では、病気の原因を、外因と内因にわけて考えます。外因は、気象の変化。内因は働きすぎや飲食の不摂生と情緒の不安定としています。情緒の不安定を「七情内傷」といい、怒りは肝を傷つけ、喜びは心、思いは脾、悲しみと憂いは肺、恐れと驚きは腎を傷つけるというように、こころと体は裏と表と考えています。
精神的なストレスのコントロールがうまくいかない場合、もっとも影響を受けやすい臓腑は中国医学で考える肝とされています。緊張状態が長く続くと、気の流れが邪魔されて「肝熱」「肝火」といった熱症状に変化しやすいとされています。火の炎が上に昇るようにこの場合の熱感も上に昇ります。
怒りっぽい・イライラしやすいなどのほかに、顔が赤くのぼせる・目の充血・血圧の上昇・こめかみの脈を打つような頭痛・頭が膨張するようなめまい・特に左側の肩こりなどの症状がみられます。病院では、更年期障害・自律神経失調症・高血圧症・口内炎などの診断を受けていることが多いです。
漢方では、こういった場合に、肝の気の流れを良くする「疎肝薬」として柴胡と言う薬草を使います。日本の漢方で、柴朴湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯などがこれに属します。しかし、これらは、のどから胸・わき腹の塞がる感じを緩和したり、むくみをとったり、冷えのぼせを解消したりするのを目標にしています。
「釣藤散」は慢性化した気のめぐりの滞りを改善してくれて、同時に顔や頭の熱傾向を解消してくれます。舌の色は赤みが強く、引き締まり方の弱いこともあります。舌の苔は白くやや厚い場合に用いられます。中国では「天麻釣藤飲」を使いますが、残念ながら日本には輸入されていないようです。
「竜胆瀉肝湯」は熱傾向が水のよどみと合わさって、もやもやした内側にこもっただるさとイライラの他、下腹部の熱症状にも使われます。舌の色は紅で苔は黄色く厚いです。排尿痛・陰部の湿った痒み・臭いの強いオリモノに使われます。
いずれにしても、生活にメリハリをつけて、リラックスする時間とストレスと向かい合う時間をうまく工夫して生活するのが予防法であり治療法であると思います。
乳ガンの診断を受けました。
Q:36歳の娘が乳がんの診断を受けました。聞くところによると、3ヶ月も前から異常に気が付いていたのに、仕事が忙しいのと恥ずかしいので、病院に行くのが遅くなったというのです。これから抗がん剤で小さくしてから手術と言われています。何か良い漢方薬はありますか?渋川市 K代)
A:樹木希林さんが乳がんの手術を受けてさっぱりしている姿を見て、恐怖心が薄らいだ人も多いと思います。
しかし、考えなければならないのが、乳がんが異常に増え続けている原因が明確にされていないということです。1970年に乳がんで死亡した率は4.7%だったのが、2002年にはなんと14.9%に跳ね上がっています。(人口10万人に対するもの)その間、何億というお金が早期発見のための検診や治療技術の革新や抗がん剤の開発につぎ込まれているにもかかわらずです。
しかも、人間が長生きするようになったから、がんが増えたように見えるという学者もいますが、乳がんは若い人が増えています。30才から45才の患者さんを中心にこの20年で3倍に増えているのです。
がんが、ストレスによって起きやすいということは広く知られるようになりました(阿保徹先生による説)しかし、乳がんについては、食事が大きな要素であることが著書「粗食の勧め」で知られる管理栄養士の幕内秀夫先生によって叫ばれています。乳がんの爆発的な増加の原因は食の欧米化で、これを食い止めるにはご飯を中心にした日本の伝統食の復活が欠かせないと言うのです。
もちろん、個人を治すのは大切なことです。しかし、乳がんになる前に予防し再発しないように抑えていく方法を模索していくのが、日本全体を考えたときより大切なことだと思います。
さて、手術前に抗がん剤による治療でさまざまな副作用が出ます。日本では「十全大補湯」や「補中益気湯」が第一選択とされていますが、私の経験では「参茸丸」「参茸補血丸」です。患者さんがもともと持っている病気と闘う力を強力に支えます。
よく、健康食品でがんにイイとされるものがあります。しかし、「事件は会議室で起こっているんじゃなく、現場で起こっている」のと同じで「病気は試験管の中で起こっているのでなく、身体の中で起こっている」のです。患者さん本人の病気(抗がん剤・放射線・手術による体力の低下)と闘う力と関係のないところに目を奪われては、足下をすくわれると思います。
もちろん、自己治癒力を発揮する「気功」や「生きがい療法」なども取り入れて、がんになったこれまでの生活の悪いクセを変えていく努力もとても大切です。
今年も花粉症に悩まされる?
Q:今年の春のスギ花粉は、例年の数十倍とテレビで言っています。私は、その季節になると少し鼻水が出たりくしゃみが出たりしますが、どうなるか心配です。漢方で悪くしない方法はありますか?(前橋 Y彦)
A:確かに、花粉症と呼ばれている「アレルギー性鼻炎・眼炎・皮膚炎」の患者さんは、日本で一千万人とも言われて、増え続けているようです。症状を軽減するのも必要ですが、一体どうしてこの国に暮らす人たちは、自然の物にアレルギー反応を起こしてしまうようになったのか、考えなければならないと思います。「化学物質過敏症」「アトピー性皮膚炎」「ぜんそく」「膠原病」などもひとくくりで言うべきでは無いのでしょうが、蔓延しているとしかいいようがありません。
漢方でも、さまざまな議論がされました。はじめは、「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」の鼻水とクシャミを抑える働きに注目が集まりました。しかし、症状を軽減する事はあっても、症状がないときに続けて服用しても体質改善には結びつかないと考えられるようになりました。そればかりか、目やのど・耳や皮膚の炎症に対しては、反って増悪する可能性もあると指摘されるようになりました。
「葛根湯加川●辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」は、肩こりを伴なった頭痛・鼻詰まりには効果は期待できます。クシャミなどよりむしろ副鼻腔炎などに応用されているようです。
「エンビ」は、錠剤で服用しやすく、鼻水・クシャミから鼻詰まりなど、鼻には効果は期待できますが、目や皮膚炎には期待できません。
「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」は、鼻詰まりとそれに伴なう口渇の症状緩和の効果が期待できます。やはり目のかゆみには期待できません。
「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」は、鼻詰まり・目やのど・皮膚の炎症に効果が期待できます。透明の鼻水よりも色のついた鼻汁に適しています。
「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、症状の予防に使われています。症状の緩和の力はあまり強くありません。
以上、保険適応の主だった漢方薬を紹介しましたが、保険外で「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」が注目されています。免疫の調整の作用を持ち、症状の緩和から体質改善までさまざまなアレルギー疾患に応用される価値のあるもので、他の漢方薬や現代医学の薬との併用もまず問題ない一押しのお薬です。
●=くさかんむり+弓
耳鳴りと難聴とめまいに悩んでいます。
Q:3年前から耳鳴りと難聴とめまいに悩んでいます。病院の耳鼻科での検査の結果「前庭神経炎」との事でした。他の病院でも検査を受けましたが、「仲良く付き合って行って下さい」と言われてしまいました。漢方薬でいい薬がありますか?(黒保根村Y雄)
A:耳鳴りや難聴、めまいの原因はさまざまです。突発性難聴もその一つです。基本的には耳鼻科に早めに相談し、必要があれば脳外科で検査を受けたり、高圧酸素などの施設に紹介を受けます。現代医学的には、治療効果が現れる期間は3ヶ月程度と言われていますので、時期を逃さず専門医に治療を受けることをお勧めします。
その時期に完治に至れば良いのですが、うまく行かなかった場合は、おっしゃるとおり直接命に関わらない病気として日常生活の質を高めるように努力の方向を変えるのも必要でしょう。しかし、耳鳴り・難聴の苦しみはなった人でなければ分からない辛さがあります。寝ようとするとそれまで受け流せていた耳鳴りが大きくなって眠りのじゃまになる。四六時中、騒音の拷問を受けているようだ。耳にねじがついていれば取り外して欲しい。患者さんにとっては本当に大変です。
漢方では五臓六腑でいう、腎と肝に関わりが深いと考えています。「黄帝内経」という漢方の古典には「腎は耳に通じる」「腎が健康なら五音を聞き分けられる」と書かれています。耳の病気は腎を疑え、と言うことなのでしょう。漢方で言う腎とは、泌尿器だけでなく生殖器系や脳神経系まで含めた概念を持っています。「腎は精を蔵す。精は髄を生じ、脳は髄の海」という表現があります。腎のエネルギーが脳を満たし耳の働きを支えるという漢方独特の考え方です。仕事でほとんど休む間もなく過労ぎみだった人。中には出産を契機に耳鳴りが始まるケースもあり、納得がいく部分もあります。「ジー」「サー」「ミーン」など、低い音の場合が多いです。腰や膝に力が入らない・痛いといった症状を伴なうこともあります。この場合、腎の精を補う働きと鎮静作用をのあるジメイ丸という処方が勧められます。
一方、肝の音は「キーン」「ピー」さらには「ゴロゴロ」という場合が多く、ある日突然始まりまることが多いです。ストレスがたまってイライラのピークに達した時に始まったり、心配事が重なった時に始まるケースもあります。肩こりや頭痛を伴なうこともあります。鍼や灸で病気が治るのは、漢方で言うツボに刺激を加えて網の目のように全身に巡らされたつぼの流れ(経絡)と対応する内臓に刺激が届き、気の流れを整えるからだとと言われています。ちょうど耳の所には肝胆のツボの流れがあるので、精神状態が不安定な人はこのタイプの耳鳴りに悩まされることが多いようです。その場合、先ほどのジメイ丸だけでなく自律神経の興奮を安定させる作用のある竜胆草(リンドウ)の根を含んだ龍胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の併用をお勧めします。
おねしょが治らなくて困っています。
Q;小学校四年生の男の子のことで相談します。おねしょが治らなくて困っています。以前は起こしていましたが、親も疲れて起こしきれません。朝になってみると乾いてしまっていることもあるので、明け方でなく夜中の早い時間にしている様です。他の事は活発にこなす子供ですが、来年の林間学校や修学旅行を控えて友達に知られるのが心配らしく、この事については、触れられるのがいやなようです。漢方に効果のある薬はありませんか?(笠懸K子)
A:おねしょについては、10年ほど前に、ちょうど西安からおいでになっていた漢方薬剤師の劉先生のアドバイスでデータを取ったことがあります。テレビ局の発行している主婦向けの月刊雑誌に「薬膳」特集を載せました。「冷えに良い」「美肌に役立つ」などの中に「中国でおねしょに勧められている」という事で、オニバスの実のお粥を紹介しました。翌日早朝から電話が鳴り続け、文字通り北は北海道南は九州沖縄まで、問い合わせの対応で一ヶ月間は日常業務がまともにできなかったのを覚えています。その時にとった二千件のデータでは、「長男・長女の順で多い」等の他に、漢方で言う「腎虚」(泌尿器の発育不全)より「脾虚」(胃腸虚弱)の事例が多いなどの結論が得られました。
アドバイスとしては、「起こさない」「しからない」「待ちの姿勢」ということが大切に感じます。起こすと、夜におしっこを作らないようにするホルモンの体内時計ができにくいという説があります。しかると、寝る前に緊張してしまい頻尿になる。(尿崩症などの疾患がなければ)必ず治るという家族の寛容さがなによりのエネルギーだと思います。
中国の漢方分野では、下腹の「関元」と言うツボを「吸い玉」という器具で刺激する方法で、治る例も見られます。
薬では、「六味丸」が基本処方です。冬、強く冷えを訴える場合には「八味地黄丸」の方をお勧めします。胃腸虚弱で疲れやすく風邪引きやすい場合には「小建中湯」をお勧めします。中国では、手足が特に冷えてしもやけになる場合に「当帰建中湯」を、風邪を引きやすくなかなかなおらない場合に「黄蓍建中湯」を勧めています。また、眠りが深く、起こしても気が付かない場合に「麻黄」という薬草の入った処方を使うと眠りが浅くなると、長春からおいでになった袁先生がおっしゃっていました。
日常生活で注意する事は、冷たい飲みものを摂らないようにします。氷の浮いているものや果物も日が沈んでからは摂るべきでありません。日本では夕食後に果物を摂る習慣がありますが、避けたいものです。更に満腹まで食べる事も避けたいことです。消化吸収するには、余裕のある腹八分目です。食べ過ぎで身体を弱くしてしまっているのは人間だけではないでしょうか?刺激の強いテレビやゲームも特に夜は控えたいものです。
老化防止には効果がありますか?
Q:漢方薬が昔から良いということは、聞いていますが、老化防止には効果がありますか?私は、少し顔にシワが増えて、足腰が疲れやすく、のぼせがあって、もう更年期が来ているのかなと、心配です。俳優の森光子さんは84才であんなにお元気なので、自分もその歳になった時、森さんの半分でも元気でいられたらと思います。効果のある漢方薬はありますか?(花輪 H子 38才)
A:はい、確かに、老化防止にお勧めできる漢方薬はあります。それは、「抗老防衰」という考え方にもとづいています。
人は年齢とともに、新陳代謝や免疫力が低下して、老化して行きます。目がかすんだり、疲れやすくなったり、動悸がしたり、たくさん食べられなくなったり、息切れがしたり、おしっこがうまく調節できなくなったり、いろいろです。
おっしゃるように、森光子さんのように、84才になっても50才代にしか見えない(見た目だけでなく体力も合わせて)人もいますし、不摂生をしているわれわれ凡人は、早く歳をとるのかもしれません。
中国漢方では、「先天の精」といって遺伝的な要素と「後天の精」といって養生に関わってくると考えています。養生とは、イライラしたりこだわらない・緩やかな運動(水中ウォークなど)・日本食を食べ、良く噛む・肩の力を抜き息を深く吐く・性生活を調節するなどがあります。もし、不調を感じなくても信頼できる漢方の専門家に相談すれば舌の状態などから、「未病」を見つけて体質の偏りが病気として芽を出す前に摘み取ってくれるでしょう。さらに、最近では、「人は血管とともに老いる」と言われ、動脈硬化だけでなく末梢血管も注目される様になりました。「丹参」という薬草を主成分にした「冠元顆粒」もお勧めできます。
お問い合わせの件ですが、顔や肌がカサツキやすいのは、「肺腎陰虚」として麦味地黄丸(日本では八仙丸と言います)も考えられますが、他の症状から「肝」の「血」の不足で杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)の適応と思われます。肝は筋を司りますから膝や腰の渋い感じがある場合、肝に失調があると考えられます。のぼせも肝の血が充分にあればあるべき所にある熱が、居場所を失って上に昇ってしまっている現象です。むやみに冷やすのは命を削る事になるのですべきではありません。
便秘と漢方
先日、北海道・日高地方の牧場で、のんびりさせてもらってきました。見渡す限りの放牧場を歩いていると、牛でも馬でもないフンと足跡を見つけました。尋ねてみると鹿なのだそうです。牛や馬の豪快な気持ち良さそうな排泄行為は憬れますが、姿を見ると跳ねるように逃げていく鹿のそれは見られなかったので次のチャンスを待っています。
自然の中の動物は、一日食べて排泄して寝ています。人間は、食べたり排泄したり寝る時間を節約して、何を得ようとしているのでしょうか?
漢方では、舌の色が淡い時「首烏延寿片」(21日分2500円)、舌が渇きやすい時「麻子仁丸」(21日分1600円)舌の色が紅い時「大甘丸」(28日分1300円)をお勧めします。煮出して飲むお茶に「はとハブ茶」があります。16日分で850円です。
冷たい牛乳のイッキ飲みで無理に下痢をさせるのは好ましくありません。
漢方と脳卒中予防
漢方では、自然界の様子を人間の身体に当てはめます。樹に風が命中して、枝が大きく揺れる様子や折れて動かなくなってしまった様子を、「中風」と言ってきました。
身の回りのストレスは、風に例えられます。処世術として大きな樹の影に居るのも風にやられない方法ですが、逆に日が当たらないという面もあります。樫の木の様に硬い木は折れることもありますが、柔らかい柳の枝は折れにくいと言います。過超なストレスを減らす一方、受け流すゆとりも欲しいものです。漢方では「抑肝散」「釣藤散」が勧められます。
木に潤いを与えると折れにくくなります。「休む」という字は、人が木に寄り添う形を表したものです。機械に寄り添っても休まりません。漢方では「杞菊妙見丸」が、肝の血を補ってくれます。
「心配」といって、自分の心のエネルギーを配り過ぎると、木の潤いが足りなくなります。「柏子養心丸」は心の血を補ってくれます。
更にそれらの肝と心の血を補うのは、脾と腎です。飲食も食べ放題のように欲望を掻き立てられると胃腸を壊します。性生活も同じ様に少食を心掛けましょう。枝は一度折れると完全には元通りにするのは困難です。折れる前に工夫しましょう。
出産後の調子が悪いのですが・・・
Q:数年の不妊治療の結果、妊娠できて、無事出産までたどり着けました。ところが、出産後、お乳の出が悪いばかりか、疲れやすく、めまい・動悸、汗が止まらない、風邪を引きやすく治りにくい、悪露が止まらないなどで困っています。これからもお乳をあげたいので心配の無い漢方薬はありますか?(宮城 M子)
A:中国の友人が、日本の病院で出産した知り合いの日本人女性の見舞いに病院を訪れて、おどろきました。昼食にカレーが出ていたのです。中国では出産後は味の淡白なものを食べさせるのだそうです。産後一ヶ月は「坐月子(ざげっし)」と呼び、外の風に当たらないために、家から1歩も外に出でません。もちろん、アイスクリームや生野菜など食べないほか、冷たい水にも触れません。(もともと、食事は男性が作ることが多いですが)オムツ洗いも男性の仕事です。女性は、当帰(とうき)という薬草の入った鶏のスープを飲んで、お乳をあげるだけで、とにかく休んでいます。産後の養生の仕方で、母体の回復ばかりか、その後の健康を左右するわけです。辛いものを食べると「気」が昇ってイライラしやすくなると教えてくれました。
ご質問の症状は、妊娠中に胎児を育てるために体力を極限まで使い切った状態(漢方で言う「気血両虚」の状態)になっています。日本で、乳汁不足にダンゴや鯉を食べさせるのはそのせいで、中国ではブタの足を食べさせます。この時期に病気になると、抵抗力が落ちているので、体の奥に病気が忍び込み、徐々に体力が回復しても奥に居座って慢性化しやすいと考えられています。特に、冷えや湿気による関節痛や腰痛には注意が必要です。
日本にある処方だと「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」や「四物湯(しもつとう)」が勧められます。中国で使われる処方は「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」という名前で輸入されています。
とにかく、一に養生、二に薬です。養生にまさる薬はありません。不養生して効く薬はありません。
すぐ夏ばてしてしまいます。
Q:私はもともと暑いのに弱く、すぐ夏ばてしてしまいます。体がだるくなり息切れがしてしまいます。口が乾いてついつい冷たい飲みものに手が伸びて、食欲がなくなってしまいます。効果のある漢方薬はありますか?(太田 K彦)
A:現代の日本では、外気温の上昇と室内の冷房の温度差、そして冷たい飲食物の摂取が、大きな原因と考えられます。外気温のコントロールはすぐには出来ませんが、時には山の木陰で昼寝をしたいものです。
一日中冷房の強すぎる所にいる場合、風呂に浸かると固くなった身体が溶けるような気さえします.。風呂から出たらクーラーで冷やさず、自然の風で身体の中から自然の温度に戻す必要があります。自律神経系の安定に役立つと言われています。クーラーの利いた部屋にいると自然な汗をかけずに、冷えた乾いた風で皮膚の表面を乾かしてしまうので、皮膚の潤いがなくなってしまいます。
時には冷たいものも口には美味しいですが、氷ザクザクの飲み物は、胃の温度を下げて食べたものの栄養分を吸収しにくくして、体力低下につながります。昔の様に温かい麦茶を飲むとサラサラした気持ちの良い汗が出て肌が潤います。冷たい飲み物を飲むとべたべたした気持ちの悪い汗をかきます。
息切れ・だるさ・めまいがあって、舌の引き締まり方が弱い人は、気虚として「生脉散(しょうみゃくさん)」を勧めます。日本には「麦味参(ばくみさん)」という名前で輸入されています。軟便で食欲がなく、身体がだるく舌の表面にヌルヌルした白くものが付いている場合、脾気虚として「香砂六君子湯(こうさりっくんし)」を勧めます。
また、手足のほてり・だるさ。口の渇きがあって、尿量が減少して舌の赤みが強く表面の苔が薄い人は、腎陰虚として「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」を勧めます。さらに、顔ののぼせ・赤ら顔が気になる人には「滋陰降火湯(じいんこうかとう)」の変方の「涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)」を勧めます。
手足のほてり・焦燥感・不眠があって、舌の赤みが強く表面の苔が剥がれている人は、心腎陰虚として「天王補心丹(てんおうほしんたん)」を勧めます。
いずれにしても、早朝涼しいうちに身体を動かし、酷暑の日中は無理せず午睡をとって、冷え過ぎていないスイカや緑豆(リョクトウ)の粥を食べるのも、夏を涼しく過ごす知恵と言えるでしょう。
高血圧と糖尿病と言われました。
Q:職場の健康診断が嫌いで、ずっと避けてきましたが、最近からだがだるく・疲れやすく・息切れ。めまいがあって、家族の勧めもあって、近くの医者にかかりました。高血圧と糖尿病と言われました。先生は食事や運動に気を付けて3ヶ月後の検査によっては、薬を続けて飲む様にいいました。なんとか漢方薬でそうならないようになるでしょうか?(前橋m夫)
A:私の経験から言うと、男の人の中には医者嫌い・薬嫌いの人が多い様な気がします。自分の身体を信頼するのは良いのですが過信するのはいかがなものでしょうか?せっかく現代医学の検査の技術が進歩しているのですから、身体に負担のかからないものであれば積極的に受診してみたらどうでしょうか?早期発見につながって病気の早期治療が健康につながるでしょう。
中国の漢方では「中西結合医」といって、現代医学の検査の結果を参考にして漢方薬を調合するやり方も増えています。私個人としては中国医学も名医の弟子になるくらいになれば、学校で学ぶ基礎とは到底想像もつかない深いものがあるので、あんまり手前で完成したくないという気持ちがあります。
M夫さんは、まず、家庭や職場での複雑なストレスを避けて、静かな環境でゆっくり静養するのがいいでしょう。頭で考えるのをやめて身体を充実させる様にします。動物を真似て「食べること」「休むこと」「寝ること」を大切にします。「寝食を忘れ」てはいけないのです。
その上で、八味地黄丸の加減方を季節や体調によって飲み換えていくのは良い事です。春のイライラしやすい時期は「杞菊地黄丸」。夏の暑い消耗しやすい時期は「天王補心丹」秋の喉・肌の乾きやすい時期は「八仙長寿丸」寒さの冬は「八味地黄丸」と言う様にです。
「牛黄清心丸」「降圧丸」という処方があり、血圧を実際に下げる効果が確認されています。前述の生活調整と体質改善の漢方薬で間に合わない時に初めて使うべき薬だと思います。前述の体質改善の処方は身体の生命力を助ける薬です。長く飲むことが不老長寿につながります。後述の処方は、薬が身体に働いて血圧などを調整する薬です。漢方と言えども身体が薬に頼る関係になっていることを理解して、現代医学の薬の様に続けて下さい
ゆとりのある生活していますか?
雨の朝、いつもの川沿いのアカシアの並木の散歩道を歩いていた。ふと見ると、そこにカタツムリがいる。危うく踏み潰すところだったので、近くのあじさいの葉の上に乗せてあげた。カタツムリは私の指から葉に何事も無かったかのように、背中に荷物を背負って、角をのびのびと伸ばしながらなめらかに葉の上を滑っていった。
子供の時は、水溜りにヒバの葉っぱを一本ずつ投げ入れては、葉の根本から染み出す油で葉が動くのを飽きずに見ていた。時間はゆっくりと動き、水面に広がる不思議な七色の虹は二度とない模様をいくつもみせてくれた。
毎日患者さんの漢方相談を受けていると、患者さんの生活の中にうるおいやゆとりが少なくなっているような気がする。毎日忙しい忙しいと肩をいからせて、不機嫌そうに飛びまわる。生活を便利にするために一生懸命働いて、手にした車やパソコン。それらを手に入れることで、なにか大切なものを手放してしまったのではないかと心配になる。
気功は、決められた動作や呼吸をして、自然の「気」を奪い取ることではない。人を押しのけて幸せを求める「我」を離れること。小さな命にもイヤな相手にも、自分が持っているのと同じ「我」があることに、気功は気付かせてくれる。その時、本来持っている自己治癒力が扉を開けてくれるような気がしてならない。お腹の底から息を吐こう。その時に肩の力を抜こう。そして、あなたのまわりに微笑みかけよう。きっと、宇宙の全てがあなたに微笑みかけてくれるでしょう。
高校二年になる娘について相談です。
Q:高校二年になる娘について相談です。この四月から学校へ行きたがらなくなり、ここ3週間は行っていません。聞いてみると、昨年から学校へ行く時になると吐き気や下痢・腹痛があったといいます。日中はなんとも無く生活しています。漢方で良いお薬はありますか?(T市 T代)
A:朝起きにくく、気分がすぐれず、やる気が起きなくゆううつ・・。見ている親御さんの方が「ゆううつで胃が痛く」なってしまいますね。まず、少し離れていても「小児心理」を専門にしている評判の良い先生を探してみましょう。良く話を聞いてくれて、本人が続けて受診を希望するような先生と巡り合うことが必要です。
漢方では、単純に下痢止め・腹痛止めの薬としては「ゲンノショウコ」などが昔から有名ですが、胃腸虚弱からの腹痛下痢ではないので効果はまず期待できません。また、中国の文献をみると舌の先が赤くただれた様になっていて、イライラの強い場合の胃痛・吐き気に「黄連解毒湯」を薦めていますが、日本人はそれほど感情を外に現わさないのでよっぽどの急性期でなければ適応ではないでしょう。逆に、同じ「吐き気や下痢・腹痛」でも舌の赤みが薄く、吐瀉物は透明で臭いが少なく、全身(特に腹部)の冷えを訴えて暖まりたがる場合に「真武湯(しんぶとう)」は使われますが、質問のケースには当てはまらないと思われます。
質問のケースは、ストレス反応から来ていると考えるのが順当ですから、「肝脾調和」を目標に、保険範囲では「加味逍遥散(かみしょうようさん)」を薦めます。肩こりが強く舌の苔が薄い場合「抑肝散(よくかんさん)」。頭痛もあり舌の苔が厚い場合「釣藤散(ちょうとうさん)」。保険外では「開気丸(かいきがん)」を薦めます。
母親と父親もしくは母親と祖父母の関係に問題があり、それが、娘に投影されていると思われる事例を数多く経験しています。適切なカウンセリングと指導の出来る機関が機能してくれる事を希望します。
「気功」が病気治療に効果?
Q:最近テレビや新聞の折り込みに「気功」と言う言葉が出てきますが、病気治療に効果があるのですか?(A村 Y男)
A:気功とは一言で言って「入静(にゅうせい)」といって、座禅を組んだ時のような、心の状態になる事です。「恬淡虚無(てんたんきょむ)」(こころがおだやかでなにものにもこだわらない)に浸ることです。
いろいろな種類の気功があります。テレビでよくやっている「ビックリ人間」のような槍でも喉が切れないのは、「硬気功」と言います。意念(いねん)で人の身体は変化しますが、それを武術に応用したり、民衆に最も分かりやすくアピールする方法です。他に被験者に触らないのに動かしたり突き飛ばしたりは「外気功」と言います。中国で気功といえばほとんどが、動かない気功「静気功」。決められた動作をする「有意動功」。身体にまかせた動きをする「無意動功」など、自分でする医療気功です。三千とも五千とも流派があり病院や公園で指導者について指導を受けます。
むかし、外国人が「日本人は皆柔道や空手の名人だ」と思うのが、思い込みであるのと同じで「中国人が皆太極拳や気功の名人だ」と思うのは思い込みです。現代医学的な表現をすると、大脳新皮質や前頭葉が優位だと、人間的な知識の世界。旧皮質、間脳とくに視床下部は感情・自律神経系の動物の世界だと言われています。気功は前者の過亢進を休め、後者の働きを活発にし、バランスをとります。「身体には三十七億年の生命の情報が詰まっている。身体に教えてもらってください」「身体の声に耳を傾けて」「森の妖精が耳元で囁き気付かせてくれる」と言うのはそのためです。その結果、自己治癒力・免疫の安定によって病気の予防・治療・老化防止に役立つことは、いろいろな研究でまちがいないことだと言われています。
日常の雑念や緊張から解き放たれ「朝露が一筋の草の上で輝く、その光に吸い寄せられるように見入る幼心」を取り戻し、今ある命を悦び感謝できる肯定的な気持ちに全身の細胞がなってくれます。中国の朝の公園は、緑の中の学校であり、病気予防ばかりでなく病気治療のためにも開かれた病院になっています。この医療費をかけずに健康増進をする方法に、民衆が自発的に取り組んでいます。日本でも、自分たちの健康について、他人や医療専門家・テレビなどの健康情報だけに任せきりにせず自分たちで助け合いながら守るしくみができたらと思います。
断食の勧め
雪が溶けて利根川の水が増えた。ひばりが鳴いて、風に湿り気が増え、夕焼けの色もどことなくのほほんとしてきた。コンビニへ行けば人気のある食べものがあふれている。欲望のままに「ランチ巡り」「食べ放題」で食い散らかしている。食物連鎖の頂点に立つ人間は、傲慢になっていないか。
その昔「採取生活」をして地球に食べさせてもらっていた人間は、「農耕・牧畜」で地球を食べ始めた。菜食のはずの牛に同種の動物を食べさせ、鶏を金網に閉じ込めて、クイモノにしてきた。漢方薬もそうだ。人間の不摂生を治すために薬草は生えているわけではない。断食をすると、身体が食べ物を求めてきしむ。今までどれだけ何気なく食べていたかを身体が教えてくれる。食べる悦びの影に、食べなければ命をつなげない悲しみが同じ大きさ隠れていることに気付かせてくれる。一瞬一瞬が光り輝く限りあるものだと言うことに気付かせてくれる。そうでもしなければ、理屈では永遠に命があるわけではないことは知っていても、頭の中はテレビから流される物欲や名誉欲にまみれてまるで「蜘蛛の糸のカンダダ」のようだ。
帯津良一先生に「虚空」をおしえていただいた。そんな大きな気持ちになったら、自分ばかりが正しくて相手が間違っているとしか思えなかった自分が小さく見えた。がんは自分の中にできた敵ではない。「がんも身のうち」。進行や再発を恐れて大切な時間をごみ箱に捨てるのはよそう。自分に預けられていた命を返却する日まで、自分の命の悦びを家族や友人と分かち合えば、そこであなたの命(愛)が途切れるはずが無い。川の流れのように・・。
父親が、肺がんの診断を受けました。
Q:73才になる父親が、肺がんの診断を受けました。もともとあまり医者にかかる方で無かったからか、本人は検査を受ける途中からこんな思いをするくらいなら家で寝て居たいと言うようになりました。たまたま、病院での治療も身体に負担の大きいもので、本人は漢方で何とかしたいと言っています。がんは漢方で治りますか?(前橋 T代)
A:がんはまもなく3人に一人はかかる病気ですし、亡くなる原因のトップで、年間30万人の方が亡くなっています。がんで亡くならない方が少ない、老衰で死ねるのは百人に4人とも言われています。
ご質問ですが、残念ながら治りますとは断言できません。少なくとも、何よりも大切な本人の自己治癒力を高めて、延命に貢献することは間違いないと言えます。現代医学の研究で、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」や「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の効果は広く認められています。大学病院でも術後の回復を助ける、放射線治療や抗がん剤の副作用止めとして現代医学を専門にしている医師で知らない先生がいないと言って過言ではないでしょう。ただ、「証(しょう)」といって体質から薬を選ぶ手続きをもっと大切にして欲しいと訴えている先生が多くいるのも事実です。
痰のからまない咳が続き、寝汗をかく「陰虚(=身体を潤す力が不足している)」の患者さんに、先ほどの処方がかえって症状を悪化させるのは、体質に合わないからです。薬に毒があるのではありません。また、「はとむぎ」など安価な身近な食べ物にも抗がん作用があることが、以外と知られていません。
先日、川越の帯津良一先生とお話をする機会に恵まれました。「群馬からおいでになっている患者さんには、気功を教えてもらいなさい、と帰しているんですよ。」とおっしゃっていました。現在私の関わっている気功の会は満員です。伊丹先生の「生きがい療法」も取り入れ笑いが絶えません。病気を人任せにせず自分でコントロールしていこうという患者さんが増えているのだろうと思います。
突然恐怖感に襲われる様になって困っています。
Q:3年ほど前から、何の前触れもなく突然恐怖感に襲われる様になって困っています。思い返すと、その前に、引越しや親の葬式などあわただしいことが多かったように思います。初めはスーパーのレジに並んでいた時に、いてもたってもいられない不安な気持ちになって、家に走って帰ってきました。その後は、家にいるときでも主人が出張の前になると、動悸がして救急車のお世話になったこともあります。.病院に着くとお医者さんの顔を見る前に治ってしまいます。本を読んでみると「不安神経症」ではないかと思います。あちこちの医療機関を訪ねました。そして、何度か精神安定剤を出されて飲んでみましたが、眠くなるばかりでよくなる気配がないので、やめてしまっています。なにか良い漢方のお薬はありませんか?(熊谷 54才N子)
A:お手紙を拝見しますと、これからの人生に不安は持っていても、憂うつな感情はないようですね。また、食事の用意や洗濯など家族の手を借りながらもなんとかなされているご様子です。
これまで、ご縁が無かったようですが、必ず、お話を聞いてくださり、よく説明をしていただける先生はいらっしゃいますから、「県こころの健康センター」などに相談して下さい。
同じような悩みを抱えている患者さんが、しばしば漢方の分野にも相談においでになります。しかし、漢方だけで「治る」のでなく、そうなってしまった(漢方から見た)体質のゆがみを調える事は、治癒を手伝うだけと考えています。「治す」のは「治したい」という患者さんの決心と、心の任せられる専門のお医者さんと専門のカウンセラーと家族の支えだろうと思います。
漢方では、舌の先だけが赤く、いらいらや不安・緊張、ある程度の肩こり・不眠に「加味逍遥散(かみしょうようさん)」を勧めます。舌の苔が剥がれてしまっていて、肩こりが強い場合、「抑肝散(よくかんさん)」を勧めます。舌の苔が白く厚く頭痛やめまいが強い場合は「釣藤散(ちょうとうさん)」を勧めます。
「柴朴湯(さいぼくとう)」という処方も不安感や喉の塞がる不快感に効果があるといわれる処方ですが、舌の苔が厚い場合に使う処方なので、薄い場合や剥がれている場合に漫然と続けるべきでないと、中国の教育機関では教えています。
不眠を感じなくても、眠りが浅かったり、夢が多かったり、明け方に目が醒めてしまう人もいます。舌の色が濃い赤の場合「血虚内熱」として「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を、舌の色が淡く引き締まり方の弱い場合「心脾両虚」として「帰脾湯(きひとう)」を勧めます。
「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」という処方がありますが、日本では「頻尿」を治す薬として扱われています。中国の原典を見ますと「虚火上炎・心腎不交」といって、精神疲労が極まると焦燥感や不眠・口渇に併せて、熱を伴ったオリモノの他、熱を伴った頻尿・排尿痛もある場合がある、とされています。日本に一部の事しか伝えられなかった例と考えられます。
最後になりますが、医師からうつ傾向が伴わない不安神経症と診断をえたら、「生活の発見会」などの自助グループなどもありますから、医師と相談の上、参加する方法もあるかと思います。ホームページも開いています。
10年前に、潰瘍性大腸炎と診断を受けました。
Q:10年前に、潰瘍性大腸炎と診断を受けました。一日に10回以上腹痛を伴った下痢状の排便があり、その半分は血が混じり粘液が混ざっています。からだ全体が重だるく頭もスッキリしません。病院ではホルモン剤を処方してくれますが一進一退です。毎年夏になると1〜2ヶ月必ず入院します.漢方ではなにか方法はありませんか?(前橋 男性34才)
A:中国医学でいう「痢疾」の症候に属すると思われます。症状や経過は非常に多様性に富むとされています。
「身土不二」という養生の言葉を聞いたことがあると思います。生活している四里四方でその時期に採れる者を食べなさいという言葉です。これに反して、私たちの食卓には風土の違う地方の、季節はずれの珍しい食材が並んでいます。テレビでは、補給すべき海外のサプリメントについての番組が話題を呼んでいます。この高温多湿の島国の中で暮らしている人には、味噌や納豆といった醗酵食が適しています。遊牧民の醗酵食は口の楽しみとして食べるべきものです。動物の脂や慣れない食べ物を摂り過ぎると、胃腸の排泄機能が間に合わなくなって「湿」という水のよどみが生れます。大腸はこれを出そうとして症状を起こします。このような形で発生する場合を「湿熱下注(しつねつかちゅう)」と言います。「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」と「四苓散(しれいさん)」や「啓脾湯(けいひとう)」を合わせます。
漢方では、何事にも過ぎることを戒めます。文明が進むと頭で考えることが多くなり経験が少なくなります。「思い過ぎ」たり「怒り過ぎ」たりすると、「肝脾不和(かんぴふわ)」となって、下痢になります。「柴胡疎肝散(さいこそかんさん)」が日本にないので「開気丸(かいきがん)」を薦めます。
病気が長引くと「腎(じん)」に影響が出ます。手足が冷えて時にはむくみ、少しの冷えも身体にこたえます。「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」に「真武湯(しんぶとう)」を合わせます。
出血や痛みに対しては、「田七(でんしち)」を合わせます。
治すことが人生になってしまうと辛いものです。症状が治ったらやってみたいことに、少しずつチャレンジして自信をつけていくのも人生のような気がします。
疲れが回復せず、朝なかなか起きられません。
Q;私は夏ばてが秋まで続き、疲れやすく冬にはよく風邪を引きます。手のひらに汗をかいたり足の裏が熱く夜寝る時冷たい所を探しています。胸もモヤモヤ熱く気分も焦りがちになります。何度か病院で相談しましたが相手にされませんでした。市販のドリンクを飲んでも少し動けても、すぐへばってしまいます。漢方で治る方法はありますか?
A;砂漠の国から来た人が「ニホンノナツハクルシイデス」と言っていました。気温40度を越えても湿度が低く一定しているので、木陰や土壁の建物に入るとさわやかなのでしょう。日本の夏は、梅雨から秋の長雨まで高温多湿です。「焼けるような暑さ」でなく「うだるような暑さ」です。どうしても冷蔵庫から出したばかりの冷たい飲み物が欲しくなります。胃腸を冷やして、消化吸収代謝排泄がうまくゆかず、体がおもだるくべっとりした汗をかきます。胃腸が弱くなると温度差などに対する抵抗力が低下します。そこへクーラーの冷たい乾いた風がくると、皮膚表面が冷やされて夏かぜを引きます。毎日忙しく身体も気持ちも休む閑がないと、からだの中の「津液」という潤い力が低下します。そうすると、おっしゃるようにほてりや焦りが表れます。特に夕方から夜にかけて繰り返し原因不明の熱感を感じる事を「潮熱(ちょうねつ)」と言います。このような身体の変化のメカニズムを漢方では認めていますが、現代医学では問題にしないケースが多いように思われます。そのため、患者さんは漢方に頼る場合が増えるようです。
夏カゼで身体がだるく・吐き気や頭重の場合、症状をとるための処方として「?香正気散(かっこうしょうきさん)」を勧めます。食欲不振・疲れやすくなかなか回復しない・下痢しやすい場合、体質改善として「桂枝人参湯(けいしにんじんとう)」を勧めます。
痰のからまない乾いた咳の場合、症状をとるための処方として「滋陰至宝湯(じいんしほうとう)」を勧めます。体質改善として「麦味地黄丸(ばくみじおおうがん)」を勧めます。不眠や焦燥感・ほてり・足腰の無力感など漢方で言う「心腎陰虚」の症状がある場合「天王補心丸(てんのうほしんがん)」を勧めます。
いずれにしても、疲れた身体に刺激を与えて無理をさせる事は、そのときには切り抜けられても「陰陽」のバランスを崩してしまいます。疲れ切った馬にムチを当てるより、休養を与えるべきです。
*「?香正気散(かっこうしょうきさん)」の?は、上が草冠、真中が雨冠、下がふるとり、です。
2003年7月30日NHK「ためしてガッテン」アレルギー総力対策で紹介された漢方処方について。
「ためしてガッテン」放映以来、お問い合わせが殺到している「梔子柏皮湯(ししはくひとう)」と「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」について、説明をさせていただきたいと思います。
Q1;アトピーや日光皮膚炎などに効きますか?
A1;単純に「必ず効く」とはお答えできませんが、患部が赤く腫れて熱を持っていて、強いかゆみを伴う場合に効果が高いと思います。色が黒ずんで厚くなっている場合には効果は薄いと思います。
Q2;どこで手に入りますか?高い薬ですか?
A2;お近くの中医薬研究会の会員のお店にお問い合わせ下さい。漢方薬の中では比較的安い部類に属します。
Q3;どうして効くのですか?
A3;NHKでは、「かゆみ神経の成長を抑える」とか「免疫細胞T1を増やす」と説明しています。
漢方では「梔子柏皮湯」は「五臓の腎の熱を冷まし、熱毒を尿の形で排泄する」としています。クチナシの実(栗キントンの色づけ)とキハダの皮(木曽の百草丸の成分)と甘草(醤油の成分)からできています。「証(しょう)」(体質)に合っていれば、どんな病名でも使うので、「二日酔い」にも「黄疸」にも使われます。
「白虎加人参湯」は「温病(うんびょう)」という概念で「衛気営血」という疾病の進化過程で「気」の位置で熱が高まった時に使う処方です。石膏という鉱物生薬を中心に知母(ちも)・粳米(こうべい)・甘草に人参(朝鮮人参)を加えたものです。「証(しょう)」(体質)に合っていれば、どんな病名でも使うので、「肺炎や脳炎による高熱」「糖尿病の口渇」「リウマチによる熱と痛み」「産後の発熱」などに使われます。
Q4;どんなことに気を付けたら良いでしょうか?
A4;漢方薬は、知識と経験の豊富な専門家に相談して服用するようにして下さい。また、あまり効果が見られなかったり、症状が悪化するようなら、現代医学の皮膚科専門医と相談する事も必要と思われます。
高校生の頃より便秘で悩んでいます。
Q:38才の女性です。高校生くらいから便秘気味になって、仕事についてからはずっと便秘で悩んでいます。市販の「ピンクの小粒」を飲むと下痢をしたりおなかが痛くなるので週末に飲んで一週間の便を出す癖がついてしまいました。漢方で毎日自然な排便ができるようになりますか?ポチャポチャ水太りで冷え性でもあります。
A:よく、「快食・快眠・快便」等といいますが、毎日の事なのでどれがかけても不快なものです。便秘をする事で食欲も無くなり、イライラしたり、肩が凝ったりします。肌荒ればかりか高脂血症や動脈硬化の原因になったりするとも言われています。たかが便秘、されど便秘です。
現代医学では、もともと薬草の中の腸の蠕動を刺激する成分を錠剤や粉・液体にしたものが使われていました。
漢方でも体質を考えないで、「便秘ならこの処方」と答えを出すのは、現代医学のものさしで漢方薬を使っているだけです。一般に良く使われている「ダイオウ」「センナ」は下剤ではありますが、からだを冷やす傾向があります。質問の患者さんがこれらの薬草を飲むと下痢をしたりからだの冷えが強くなり、いつまで経っても薬のお世話にならなければなりません。むしろ、朝に「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」を、昼に「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」を、夜に「麻子仁丸(ましにんがん)」を勧めます。冷えの原因のよどんでいる体内の「水」を取り除いて、からだの温かみを増やして便秘の原因を解消するのです。自然な排便がすぐに来るとは断言できませんが、加減を繰り返し生活を整えていただければ、自己治癒力が発揮されて程々の所に収まると思います.
ところで、最近幼稚園から高校生に至るまで、便秘になっていて強い薬に頼っている患者さんが増えています.話を聞いてみると欧米的な食事をしている人が多いようです.学校でウンチはしたくないし、おなかが鳴るのが恥ずかしくて学校に行けなくなってしまうケースも良く耳にします.保険の効く薬草「ケツメイシ」は、炒ったものは香ばしくて麦茶のような味で抵抗無く飲めて小さい子供さんから気難しいお年頃の人たちにも人気があり便秘に効果があって、お勧めできます。
いずれにしても、日本の伝統食(ごはん・みそ汁・漬物をベースにした)をして、早起きして散歩してゆっくりトイレに座る習慣をつければ、自ずから解消されると確信しています。
SARSが万一日本に入ってきたときに心配です。
Q:いま、世界で恐れられているSARSですが、現代医学では特効薬がないと言われていて、万一日本に入ってきたときには、とても心配です。中国では漢方薬を奪い合っているとテレビで報道していましたが、ゆっくり効く漢方薬で効果が期待できるものはあるのでしょうか?
A:確かに、中国を中心に「新型ウイルス」が猛威をふるっています。中国では「非典(フェイティエン)」といって、典型的な肺炎ではないという意味だそうです。いま、漢方の専門家の中でもいろいろな意見が出されています。中国の衛生部や一流の漢方の病院から提案されている薬草については後で報告するとして、私の個人的な考え方を述べてみたいと思います。
これまで、農薬の殺虫剤が効きにくくなっているとか、病院でMRSAなどという菌が伝染したりして、必ずしも現代医学が万能でないことはうすうす気が付いてきたと思います。人間が自然に対して「征服しよう」と戦いを挑めば、思いもよらない形でしっぺ返しを受けるでしょう。
なにか予防的な意味がある行動をとるとすれば、自然な運動を増やし・不自然な食事を減らし・眠る時間を早寝早起きにすることからはじめるべきでしょう。パニックになる必要はありません。体力の落ちた状態であれば発症する可能性は当然高まります。不摂生をしていても感染しないと言う便利な薬を期待すべきではないという事をしっかり身につけるチャンスです。
その上で、もし予防的に意味があるとすれば、中国で提案されている、オウギという薬草を中心にした「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」、治療的に勧められているのが「板藍根(ばんらんこん)」や「金銀花(きんぎんか)」を主成分にした「銀翹解毒丸(ぎんぎょうげどくがん)」です。
これからも、自然をコントロールしようとすれば別の形の病気が生まれるような気がします。むしろ、自然に生かされている枠の中でどう調和していくかを考えていったほうが良いような気がしてなりません。
花粉症に効果のある漢方薬を教えて下さい。
Q;5年ほど前から花粉症で悩んでいます。春になると突然くしゃみ鼻水で仕事にも支障が出ます。夜は夜で鼻詰まりで、眠れない始末です。ひどい時は喉が痛くなり、目も痒くなって困っています。病院に行って薬をもらいましたが、眠くなって続けられませんでした。漢方では効果のある薬はありますか?
A:アレルギー性鼻炎や眼炎は、15年ほど前から患者さんが増えてきています。花粉ばかりでなくディーゼルエンジンの粉塵や家庭内の芳香剤や電気蚊取り線香などの農薬など、アレルギーの原因になると思われる物質は、どんどん増えています。
現代医学では、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服や副腎皮質ホルモンの外用剤などで、症状を抑え込んでこの時期を切り抜けるのが標準的な方法と聞いています。
漢方では、有名な「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」のように症状を抑えるものもありますが、「肺の衛気を補う」という方法で体質改善を期待できる処方もあります。それは「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」という処方です。外気温の変化(特に急に寒くなった時)について行けなくて人一倍寒く感じる、外気温の変化(特に急に熱くなった時)について行けなくて人一倍熱く感じ汗をかきやすい、身体を動かすと息切れがして疲れやすいというタイプの体質に使います。舌は引き締まり方が弱くて、歯の跡がついています。
最近の薬理学的研究でも、この処方で、IgEの異常上昇を抑え、IgAの生産を高める作用が確認されています。言いかえれば、症状が出てから抑えるのでなくて、免疫力の強化に貢献し炎症を起こしにくくする働きが期待できると考えられます。これまで、保険範囲内の「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」で代用していましたが、「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」と言う名前で輸入されるようになりました。
しかし、やはり薬に頼り切りになるのではなく、夏にクーラーにあたりすぎない様にしたり、肌を鍛えるために乾布摩擦などを心がけたり、食べ物をしっかり良く噛むというのもりっぱな予防法です。更に可能なら一日に30分でも良いから速歩などの運動をして全身状態を改善してください。
漢方薬について教えて下さい。
Q:漢方薬は自然な薬草からできているので、副作用はないと聞きましたが本当でしょうか?また、自分に合った漢方薬はずっと続けた方が良いと聞きましたがどうでしょうか?
A:漢方薬はおっしゃるとおり、自然の薬草の他鉱物や動物などからできています。鉱物では、紫水晶などが知られています。動物では、牡蠣の貝殻や古代動物の化石等が知られています。長く煎じると精神安定の働きがあって、昔の人は「カルシウムが精神安定に良い」と教えられなくても経験から身体を守る方法を身に付けていたんだと感心します。文字通り「漢方医薬学は人類の宝庫」と思います。
ところが、人間は自然によって生み出されたとは言え、自然は人間の都合の良いようにはできていません。例えば、「トリカブト」という毒草があります。まちがってこの葉っぱを食べて亡くなった方は多く報告されています。自然だから安心という事は言えないと思います。この「トリカブト」の根を弓矢のやじりにつけてヒグマを狩猟していたのが、日本の先住民族のアイヌ民族です。さらに、古代の人はこの根を加工して強心作用や鎮痛作用を利用できるように工夫していました。現代人の貧しい生活力からは想像できないたくましい智恵を感じます。この根は「附子」と言って「八味地黄丸」などの処方の中に入って効果をあげています
ところが、この「附子」は無条件に身体の痛みを取るのではありません。身体に冷えを伴う人に使うものです。これを知らないで、「腰痛」に良いと書いてあるからと言って熱を伴って腰の痛みで困っている人が「八味地黄丸」を飲むと反って症状が悪化する可能性があります。
でも、これは漢方の方では「副作用」と呼びません。「誤治」と言います。薬が悪いのではありません。患者さんに合わない薬を用いてしまった結果です。たとえば、包丁で美味しい料理を作るのは良い事です。包丁を持って銀行に行ったら、使い方の間違いです。包丁は悪くありません。そう言う考え方です.薬の選び方が大切です。
薬をずっと続ける方が良いかというと、続けたほうが良いと思います。人間のからだは少しずつ衰えていきます。年老いていきます。これを少しでも遅らせて元気にいるには、食事でとりきれない部分を漢方薬で補うのはとても良い事と思われます。ただし、漫然と何年も前に合ったと言う薬を続けるのは問題があると思います。それは、体質は少しずつ変わると言う事を忘れているからです。体質が変われば必要な薬も変わります。また、細かく言えば、服が夏と冬で違うように「内服」する薬も変わるべきです。わかり切った事かもしれませんが、もちろん、薬さえ飲んでいれば不摂生をしても良いかというとそうではなく、摂生の次に漢方薬があることを申し添えます。お元気でお過ごしください。
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